メトリブダイアリー

お笑い、ラジオ、音楽(主に邦ロック系)などサブカルなことや日常のことを書き連ねる予定です。一人でも多くラジオを聴く人が増えるといいと思ってます。

さよならたりないふたり〜みなとみらいであいましょう 11月3日 TOHOシネマズ上大岡ライブビューイングでの感想〜

圧巻でした。圧倒的でした。富も地位も名誉も芸能界では屈指のもの手に入れてしまった「たりないふたり」。そして片方は今回復活のきっかけを作ることになった女優の奥さんと今年6月にゴールインし、果たして本当にたりていないのか?今更たりないふたりなんかできるのか?と個人的に思っていたところでこの日の圧巻のパフォーマンスでした。

 

 

キャパ500という同じ日東京ドームを満員にしたBUMP OF CHICKENが渋谷QUATROあたりでライブをやるようなありえない規模でのゲリラ的ライブを行なった、まさに客席もたりないふたりです。

そんな中、演出の安島さんは多くのファンのために全国でライブビューイングを実施。ほとんどの人がこの伝説のライブをスクリーン越しに目にすることができたのではないでしょうか。

 

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その安島さんは開演前、「楽屋にいる二人も聞いてください」「即興漫才を行うのでスベる可能性があります。そんな時に電話がならないよう、電源はお切りください」など客をクスリとさせる前説的諸注意を担当。しかし、会場も映画館も久しぶりの復活だからなのか一人客が多いからなのか始まるまでは一本の糸が張り詰めていたような緊張感が漂い続けていました。
諸注意には今まで明かされなかった今回のライブの概要も。開始1時間まで会場隅にあるホワイトボードを使用し、漫才を作る時間とし、その後漫才を披露。最後にその反省会をするというものでした。そしてこのルールの肝は机に置いてある赤いボタンを押せば1時間を待たずして漫才を披露できるという点でした。

そして、会場が暗転し、映像が流れはじめます。二人が2009年に初対面してから、これまで行ってきたライブのダイジェスト、このライブのきっかけになった山ちゃんの結婚、そしてあの有名な山ちゃんから深夜のバスケット野郎若林さんへの「オレ、結婚するわ」という電話、そしてその返答の「あぁそう。じゃあオレ戻るね」というゾッとするほどたりない会話までをヨルシカの「ただ君に晴れ」をBGMにその歴史を振り返っていました。

 

ただ君に晴れ

ただ君に晴れ

 

 

そして、いよいよ会場の下手からは山ちゃんが上手からは若林さんが登場し、二人を隔てる真ん中の赤い幕が上がる位置に到着するとカウントダウンが始まりました。カウント0になると、幕が落ち、そこでようやく二人は対面するという仕組みです。二人とも顔を作って真剣に見つめ合うというコントをしようとしていたようですが、実際幕が落ちるときには爆笑。9ヶ月ぶりの邂逅を待ちわびていた二人はすぐに打ち解けます。
我々と同じタイミングで今回の概要を聞いていた二人。山ちゃんは少しでも早く漫才を作ろうとしますが若林さんは「でも山ちゃんさ」「オレたちもこの5年でだいぶ変わったよな」と二人が再開した位置から動こうとしません。
そのまま10分ほど経過したところ、「え、これ押せば漫才始まるの?」と若林さんがボタンに手をかけます。山ちゃんが「待って待って若林くん!」と慌てるも虚しく本当にボタンを押してしまう若林さん。会場が赤黒く暗転し、ゲームオーバー的な雰囲気を醸し出しながら二人が履けていきます。相変わらず若林さんに振り回される山ちゃんという構図ですが、この予定調和をぶち壊すというパワーアップした若林さんの行動は、事前のフライング解禁が一つの伏線となっていたように思えました。

 

そしてこの後が一つのハイライト。「たりないふたり」という楽曲で世に出てきたCreepy Nutsがこの日のために書き下ろした「たりないふたり~さよならバージョン~」が流れる中、楽屋からスーツに着替えた二人を映し出していました。リリックがこの日に合わせて変更されたこの曲は、不毛リスナーのR-指定さんとリトルトゥースのDJ松永さんにしか書けない曲です。
「下から関節」「足が長い」「ビオフェルミン」「武道館満員」「いい恋させてもらった」などファンがよだれ垂らして喜ぶキラーフレーズを次々と惜しみなく投下します。最後の「見届けよう皆と未来」には会場中が震えました。

 

たりないふたり

たりないふたり

 

 

そして登場した二人。事前に打ち合わせの時間を与えられたにもかかわらずクレイジー若林のせいで完全なる即興漫才となってしまった二人が何を話すのか。口火を切ったのは若林さんでした。
若「あのーこうやって5年ぶりにみんなの前に立つとね、、、何も思い浮かばないね」
山「だからさっき考える時間あったでしょ」
若「さっきでも裏で怒号が飛び交ってたね。どうすんだこの後!漫才終わったらどうすんだ!って。アハハハハハ」
これはクレイジー若林。
しかし、全くのノープランというわけもなく、この5年の間にあったことを振り返りながら喋るという展開に。
若「あのことはいじらないでよ~やめてよー南沢奈央とのことは」
と普通に言っていじらせない若林さん。山ちゃんには虫垂炎広瀬すずからTwitterのフォローを外されたなどの細かいニュースをいじり、あの件はなかなかいじりません。
若「じゃあ蒼井優さんのことはいじりません」
山「それは違うじゃない」
若「じゃあゴリゴリにいじります」
山「ゴリゴリってどんな感じ?」
若「いやほんと抱き方とか聞く」
山「バカじゃねえのか!」
流石です。

そのまま若林さんが主導権を握り、山ちゃんが振り回されるという展開が続きました。
やはり守るものができてしまった山ちゃんは今までにも増して防戦一方で、若林さんのやりたい放題。
しかし、山ちゃんの守るものがあるという状況が最高の振りになってあのシーンが何倍も面白くなったのでした。結婚したからこそできないこと、それは、、SM。。


かつて女王様に忠誠を誓っていた山ちゃんもついに結婚。挨拶に行った方がいいと設定を振る若林さんが女王様になり、山ちゃんを迎え入れます。
ここで久しぶりにMスイッチに火がついた山ちゃんのターンへ。
若「あんた、こんなとこ来ていいの?」
山「はい、すいません」(両手を差し出す)
若「いいのかね〜こんなことがバレたらあんた、レギュラーなくなるよ」(両手を縛る)
山「いや、それはですね。。」
若「早く話せよ!お前手差し出してんじゃねぇか!」
ここから畳み掛けるように山ちゃんは自ら四つん這いになり、机として「このままIKEAに出荷して下さい!」と叫んだり、「背中に蝋でNHKと書いてください!」と叫んだり、若林さんに両脚を掴まれて「汚いヘリコプターだね!」と罵られたりと完全に何かのドアが開いた音がしました。目が違いましたから。
それまでは若林さんのペースについていった山ちゃんが初めて主導権を握った瞬間でした。終わろうとした若林さんに対し、「この店延長ないの?」と懇願したくらいです。
若「SMも即興だもんね」
山「SMはジャズだから」
久しぶりにこのドM山里を目にしたファンは多いでしょうが、やはり結婚が振りになって今までよりも格段に面白かったです。

 

 

結局即興漫才は1時間20分程度行われ、ようやく反省会へ。しかし、クレイジー若林がとんでもないことを言います。
若「あれ言い忘れたわ。山ちゃんがこの前会見で言ってたご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いしますってやつ。ハハハハハあれ面白かった」
山「面白くないわ。この会場の中で言えないのお前だけだよ!」
若「あとあれ。手コキ卒業式やりたい。あのボタン押せばできるの?」
山「ちょっと待って落ち着こう。なに手コキ卒業式って」
若「受付で迷った!」
山「液晶パネル!」
沸き上がる会場。
若「オプションで付けた!」
山「ローターまみれ!」
本当に即興なのかというほど次々と言葉が出てくる二人。二人のすごさはこのシーンに詰まっている気がします。
縦横無尽にボケを繰り出す若林さんに対し、ノータイムで打ち返す山ちゃん。このライブ全てでですが、卓球の高速ラリーを思わせる二人の言葉の応酬が本当にカッコよかった。それも低俗な内容というのが更にカッコいい。

 

そしてついにボタンを押してしまう若林さん。赤黒く会場が暗転した後、退場し、そして再びCreepy Nutsの曲が流れて登場する二人。二度目の漫才はエンジンがかかったまま始まったからか、序盤から飛ばし、蒼井優さんの話題へ。
若「蒼井優さん以外でもさ、ボールが来たら振ってたんじゃないの?」
山「それはまぁでも蒼井さんが僕のことを言いって言ってくれたからで他の人は分からないよ」
若「ちょっと打席立ってみてよ」
打席に立つ山ちゃん。
若「こじるり」
戸惑いながらも見送る山ちゃん。
若「こじるり」
見送る山ちゃん。
若「本田翼」
苦悶の表情を浮かべて見送る山ちゃん。
若「蒼井優
全力で振り切る山ちゃん。
若「ダレノガレ明美
打席から外す山ちゃん。
この遊び面白いです。。大学生は友達とやるべし。
山「次お前立ってみろよ」
左バッターボックスに背中が見えるほどのクラウチングフォームでガムを噛みながら構える若林さん。どこのメジャーリーガーなのか。
失う物のない若林さんは山ちゃんから繰り出すボール全てをバックスクリーンに叩き込みます。しかし、
山「弘中アナウンサー」
苦笑いを浮かべて思わず見送る若林さん。
若「タイム。あのさぁ苦手なんだよこういうの。わかるだろ?難しいんだよやめろよ」
と、詰め寄ります。
ボス、良いボール投げました。

 

 

そして再びSMプレイが始まり、本当に、山ちゃんの手首を縛る若林さん。
若「お前は金も地位も名誉も女優の奥さんも持った。お前は隠れとんねるずなんだよ!そんな全てを手に入れたお前がワイプ芸を解説する女性タレントやゴルフを始めるモデルを叩くことの何が面白いんだい?全部お前より格下なんじゃないのか?ライオンがウサギを食べることのどこが面白いんだって聞いてんだよ!」
これをきっかけに縛られたままの山ちゃんが独白を始めます。
山「僕がね、結婚したとき、もう妬みや嫉みを武器にできないんだなって思った。ずっとそれでやってきたから一つの武器を失うことになったと思ったんですよ。でもその武器を失ってでも良いと思える人と結婚しようと思って今があるんですけど。一般の人からもお前が言うなってことを言われるし、それはしょうがないことだって思ったんですよ。でも、それだったらなにか新しい武器を見つけないといけないなって思ってて。そんなときに、今日のライブでは妬み嫉み以外の部分でも笑ってもらえて、なんかすごい自信になったんですよね。だから芸人人生の中でも今日は一つのターニングポイントでした」
今に始まった事ではないですが、山ちゃんの"受け"は面白いです。確かに若林さんみたいに仕掛ける事はないかもしれませんが、迎え撃つことに関しては確実にトップクラスです。結婚したらしたで、また違う山ちゃんでファンを楽しませてほしいです。

 

若「じゃあオレは行くわ」
とヘリコプターから垂れ下がる梯子に捕まる若林さん。
若「ブリブリブリブリ」
と、ヘリコプターの回転音を叫び履ける。
山「汚ねぇヘリコプターだな!」
完璧な伏線回収。汚いのに美しい。映画館でも万雷の拍手でした。

 

 

そして本当の反省会では、若林さんは山ちゃんのために名前入りのマグカップという結婚祝いを用意していました。
こんなことできるなんて、もう全然たりてます。
若「結婚だけがたりてるのか!?オレももう卒業だよ!」
曰く、番組でも飲み会でも招く側になって、自分よりも若い人と接することが多くなり、「これホントは帰りたいんだろうな~」と思ったり、楽屋に挨拶するタレント相手になるべく緊張させないようにするなど自身の変化を話していました。著書である「ナナメの夕暮れ」にもあるように、40歳も超え、芸能界でもそこそこの位置になってしまうことで心境と環境に明らかな変化があったようです。
結局、気遣いの二人なんですよね。
ただ、「破天荒エスケープ」「ブラックエスケープ」など新たな技を披露したりするなどたりない面も健在で、「たりないふたり第2章」が始まると高らかに宣言していました。
いつ再始動するか分かりませんが今回で終わりではないというのが分かって安心しました。

 

 

エンディング映像では、出囃子にもなっていた銀杏BOYZの「BABY BABY」に乗せて、二人の数日前のインタビューを観ることができました。山ちゃんは「若林くんがいることで自分も頑張ろうと思う」若林さんは「こんな自分を受け入れる人は他にいない」とお互いにお互いのことを尊敬していることがひしひしと伝わりました。「かけがえのない愛しい人」か。。気持ち悪い。

 

BABY BABY

BABY BABY

 

 

このライブを振り返ったとき、オープニングのヨルシカの歌詞にあった「追いつけないまま大人になって」「俯いたまま大人になって」という歌詞は今のこの二人にピッタリで、ある種、青春の終わりを想起させるものだなと思いました。
寂しさも感じるけど、確実にパワーアップしていた二人を見るとおじさんになるのも悪くないと感じます。
これを書いている時、自分も参戦した2012年の「たりないふたりsummer jam'12」のDVDを見ています。二人とも若くて、企画に沿って愚直に素直に進行していく姿が今観ると必死に頑張っている模索している最中で本当に不器用でたりてないんだなと思います。でも2019年の二人は余裕があって、即興でも面白いものを提供できる実力もあって、なにより、大人のカッコ良さを感じました。昔のたりなかった二人の方がいいという人もいるかもしれませんが、僕は絶対に今の二人もパワーアップしていて好きです。
この企画が再始動すると知った時は今更"たりてるふたり"が何をするんだ?とナナメの目線で見ていましたが、この日のライブを観て、たりてるとかたりてないとかどうでもいいなと思いました。この二人が舞台に立って話していればそれだけで面白いから。
だからまたこの二人が揃うのを心待ちにしています。その時はもう少し大きい会場でお願いします。安島さん。