メトリブダイアリー

お笑い、ラジオ、音楽(主に邦ロック系)などサブカルなことや日常のことを書き連ねる予定です。一人でも多くラジオを聴く人が増えるといいと思ってます。

今のBase Ball Bearは最強。アルバムC3は過去の栄光に頼らない僥倖。

真面目な日本人は政府がもうとっていいよというまでマスクの装着を続け、コロナの前に熱中症で死者が出てしまうという500年後の風刺画に描かれて笑い話になりそうな夏が到来してきました。厚労省は条件付きでマスク外すことを容認しましたが、それでもほとんどの日本人は真面目にマスクをし続けます。

 

各地で開催される予定だった夏フェスも軒並み中止となり、毎年フェスでオシャレしてビール片手に映え写真を撮影していた人も有名人であることを思いっきり武器にして各フェスでナンパを繰り替える某芸人もさぞかし憂いていることでしょう。

 

 

そんな夏フェスに欠かせない“夏バンド”“晴れバンド”“青春バンド”と呼ばれているのが「Base Ball Bear」です(以下ベボベ)。

アラサー世代の人たちにはよく聞いた名前だと思います。実際僕も10年位前に聴いていて今もまあ夏になると聴くかなというくらいでした。とにかくこの世代の人間はみんな知ってるしそれなりに好き。100人に聞いたら70人くらいは「あーベボベね。昔聴いてたな。あれよね。ドラマチックとかシーブリーズのCMとかshort hairとか?」と答えるでしょう。

 

しかし、2016年、ギターの湯浅さんが突然疾走し、その後脱退。彼らにとって禁じ手だった同期音にも手を出したり、サポートメンバーを入れたりと紆余曲折した結果、今では3ピースバンドしてのアイデンティティを獲得しました。

 

 

そんな彼らが“3人の音だけ”初めて世に出したアルバムが「C3」です。デビューアルバムの「C」、初期のキラキラ感を脱却してブラックミュージックに影響を受けたような楽曲と社会風刺めいた歌詞が印象的な2015年発売の「C2」(その直後湯浅失踪はなにか因果関係があるのか?それはまた別のお話)。そして今回の「C3」では3人になったベボベの第三章とも言われています。

 

前置き長くなりましたがこの「C3」がめちゃくちゃ良いアルバムだっていう話です。(発売日は今年の1月なので何を今更感強めですが、)

まあそれもそのはずで、彼らがここ最近発売したEPの曲が8曲も収録されているわけである程度“計算できる”アルバムでした。MVも出してるし、ライブ映像も違法含めて上がっているし。(つまり1年以上前の曲の感想を書くという更なる今更感)

でもだからこそ最近ベボベ聴いてないっていう人におススメしたいアルバムなんですよ。(ダメ押しの今更ですが聴いてください)

その中でも特にこれキタな!という楽曲はこれ。

 

 

#2「いまは僕の目を見て」

イントロのギターの爽やかさはとても30代後半のアイドルオタクが考えたものとは思えません。メロディもキャッチーでとても聴きやすい。夏っぽさがありますが、MVは秋の渓谷みたいなとこで撮影されています。この曲を聴くと昔のベボベを思い出すという人もいるみたいです。ギターの音良すぎる曲No.1です。言葉は穴の開いた砂袋なんだよなあ。すごく歌詞分かります。

 


Base Ball Bear - いまは僕の目を見て

 

#6「EIGHT BEAT詩」

Back To The 2001年というリリックから始まるベボベのこれまでの歴史を振り返るような楽曲です。全編通して小出さんのラップで構成されており、ギターレス。ドラムゴリラとプログレ大好き関根譲が操るチャップマンスティックのみで支えています。3人になって最も進化と驚きをもたらした曲かもしれません。

 

 

#8「PARK」

こちらも小出さんのラップを中心に構成されています。社会風刺のようなリリックを動物にたとえてラップしているのが印象的です。途中のギターソロもイカしてます。元々は関根譲が考えたベースラインから作り上げたようで、作曲のクレジットには関根史織の名前も。これもまた進化です。

 


Base Ball Bear - PARK (2019.2.17 Ver.)

 

#10「ポラリス

志ん朝三枚起請を聞きながら切れた三弦を張れば三日月のカーブで見てた三毛猫が僕に笑うんだ”この初っ端の歌詞から掴まれました。ちなみにそのサビ終わりに“朝寝”という歌詞も登場しますがこれは古典落語三枚起請の重要なキーワードの一つ。思わずニヤっとしてしまいます。とにかく「3」。さん、サン、三。歌詞全体を読んでもこれから3人でやっていくんだという強すぎる決意が読み取れます。こんな感じでメタファー的というか言葉遊び的な歌詞が続くんですけど、間奏挟んだラスサビで突然“ギター、ドラム、ベース 輝くフレーズ 結んだ先にポラリス”というどストレートな言葉を並べて畳みかけるのがにくいところです。この3人だけの武器で戦っていく決意ソングですね。演奏面では間奏でそれぞれのソロパートがあってカッコいいし忘れてはいけないのが3人ともがメインボーカルを務めていること。堀之内さんファンは必聴です。

 


Base Ball Bear - ポラリス (2019.3.2 Ver.)

 

#12「風来」

これもまあずいぶんと爽やかで疾走感ある曲です。歌詞的にツアーで次々と違う街に行くことを歌っていると思います。2,3泊で次の街に風来のように去っていくわけですね。風まかせに。ライブの最後に演奏している姿が目に浮かびます。深呼吸やラブアンドポップ、「それって、for 誰?」part.2などベボベのアルバムの最後の曲強すぎ説ありますが、この曲も説立証に大きく貢献しているはずです。

 

 

一昨年のフェスで3人になったベボベのライブを見ました。周りの客層は自分と大体同じ20代後半くらいで男性多め。披露された楽曲はそんな我々が若き頃に聴いていたものばかりで、イントロが流れるたびに皆で歓声を上げていました。とても感動的な時間でした。最後のドラマチックとか特に。しかし同時に一人足りない感はどうしても拭えず、あの頃のベボベじゃないんだ、また4人の曲を聴きたいという寂しい気持ちにもなってしまったのも事実です。実際、ライブ終わりには近くの客が「音スカスカだったな」というようなことも口にしていました。原曲と比べたら当然そうなってしまいますが。。

 

 

そんな思いもこのC3を聴いて完全に覆りました。今までのベボベらしさは残しつつも、ラップやリズム隊のボーカル、新しい楽器の導入などもしかしたらこの形態にならなかったら実現しなかったかもしれない素晴らしい進化を見せてくれたからです。

EIGHT BEAT詩の中で湯浅失踪後に“これは逆転のための合図”というリリックが出てきますが、3人になったからこそできたことがあるのです。

 

 

C3はかつてベボベを好きだったっていう人にこそ聴いてもらいたいアルバムです。スカスカだったと宣っていた人にも聴いてもらって今のベボベを好きになってもらいたいものです。